AVGゲーム
「Innocent Garden」プロジェクト始動 Innocent Garden

彼女たちの身体は、血と、肉と、歯車でできていた――

□作品概要
この作品は現実を軸とした近未来のAVGゲームである。

政治や兵器、軍隊など実生活から遠くかけ離れた魅力的な要素をふんだんに用い、人間の思想や行動を緻密に描くことで知的好奇心を駆り立てるような物語にしたい。
また、登場キャラクターごとに世界を確立させ、人間味溢れる様子を描いていければ幸いである。
一人の人間の力ではどうしようもないことに対して、どれほど人間臭さが出せるのかが重要になってくる。
同時にキャラクターを通して人の繋がりを感じてもらえるようなものにしたい。


□あらすじ/世界観
 先に述べたように本作は現実を軸にした近未来の物語である。2007年前後までは史実にのっとったものとし、それ以降は架空の、それでいて十分に有り得そうな、リアルなものを目指す。
 2015年――テロ、BRICsの成長と台頭、世界情勢の悪化、経済不安など、様々な問題を抱えた日本――
 日本の高度経済成長を思わせる中国の急激な経済成長により、中国のGDP(国内総生産)が日本を抜き、世界で2位になった年、日本では東海・南海・東南海地震が同時に発生する(※1)。この巨大地震により四国から関東にかけての太平洋側の都市機能は壊滅的な被害を受け、首都の機能が一時的に麻痺してしまう。ついで地震復興時の脆弱な体制の隙をつき、東京都地下鉄内で大規模な同時多発爆弾テロが発生する。 これが決定打となり、日本の能力は著しく低下してしまう。国力が減衰した日本に見切りをつけたアメリカは本格的に中国との関係の強化に強めるようになった。平和ボケしていた日本も、生き残るための策を必死に模索した結果、軍事兵器開発強化という未知の領域へと足を踏み入れることを決意したのだった。
 爆弾テロと地震により衰退した国力の影響により、国民の総意を得るにはそう時間はかからなかった。今まで建前的な国の防衛という能力しかなかった自衛隊も、国防自衛軍と名を変えることとなる。日本はその国防自衛軍内に新たに技術開発部を作り、各々の分野に特化した研究室を組織した。様々な兵器が研究・開発されては廃棄される中、国防自衛軍技術開発部人型戦闘兵器局レガシーでは局所的な戦場での使用を目的とする人型戦闘兵器の研究開発を行っていた。しかし、AI(人工知能)による機械体はその時点の技術では開発が困難で、研究は思うように進まなかった。そこで軍上層部は秘密裏に人間の子供を使ったサイボーグの研究開発を進めることを決定する。もちろん軍事研究といってもそのような非人道的な行為が容認されていたわけではなかったし、この情報が漏れれば国際問題に発展しかねない重大な問題となる。それでも、生き残るための手段として、AIによる人型戦闘兵器の開発の足がかりとするためサイボーグの開発を推し進めたのだった。
やがてその研究は実を結び、局地戦闘用生体接融型機械体、通称“生機体”と呼ばれるサイボーグが作られることとなる。人間の脳をベースにして、身体の主機能を機械化することで普通の人間では不可能な能力を付加した半機械体である。時を同じくして経済成長に伴う歪に苦しむ中国では強権派の李が首相の座に着いた。李首相はさらなる経済成長と軍備拡張を訴えたが、それに伴う圧政により少数民族と貧困層、人権擁護団体などからのバッシングを受け、国内で暴動やデモ、テロが相次ぐようになった。その過程で、民衆の暴動・デモを止めるために配備された軍隊が民衆に向けて攻撃するという事件が発生する(第二天安門事件)。これを契機にして各地で革命が叫ばれるようになり、痺れを切らした民衆は団結して首都に進行、李首相を軟禁して首都を占拠してしまう。これに対し、国連はPKOを派遣して事態の沈静化を計ろうとする。大多数の民衆は国連の申し出を素直に受け入れたが、改革側の過激派は依然として首都の占拠を続けていた。国連は多国籍軍を展開していたが、首都圏での大規模な戦闘行為は国連側、過激派側、民衆側の三者ともに避けたいものであり、牽制しあう状態であった。一方、生機体が完成(表向きは人工知能による自律行動型人型戦闘兵器)し、実践での効果を見たいと考えていた日本にとって、首都という局地的な戦闘場所は格好の実験場であった。日本は国連に対して生機体の投入を打診し、各国もこれを容認する。どの国も自国の軍隊がダメージを受けるのは避けたかったし、衰退した日本がどのような兵器を開発したのかということに対する興味もあったのである。投入された生機体シリーズは驚くべき能力を発揮し、大きな成果を上げて各国を驚かせた。その有用性を十分に証明したのである。しかし、予想以上の成果は思わぬ弊害を生んだ。各国の注目を浴びすぎたのである。今まで何の関心も抱かなかったものたちがこぞって生機体の情報を集め始めれば、生機体が人間をベースにした非人道的兵器であることが公になる可能性が著しく高くなる。生機体の研究・開発と平行して行われていた完全な機械体である自律行動型人型戦闘兵器(オートメタル)の研究開発はその時点では完了しており、日本にとって生機体をこれ以上抱えておくのは得策ではなった。そんな中、研究施設で整備中だった一体の生機体が突如暴走、多数の死者と多大な損害をもたらすという事件が発生する。これが決定打となり、政府と軍部は生機体の開発を中止し、生機体全てを破棄することを決定した。だが、極秘だったはずの情報がもれてしまい、研究者の一人に破棄決定が知られてしまう。生機体本人とそれに従事していた研究者が自分たちの身を守るために軍からの脱走を決意。多数の犠牲を払いながらも何とか脱出するが、機密情報の塊である生機体とその研究者を回収するため軍部は追撃を続ける。脱走に成功した研究者と生機体は、『技機制限法に基づく生機体の破棄決定』を取り消すため、防衛大臣と首相の殺害と追撃に対する抵抗のため、反レガシーを組織するのである。

※1… 過去の発生状況を調べると東海・南海・東南海地震は一つ一つが独立して発生しているわけではなく、どれかが発生した際それに連動して誘発しているということが分かっている。もちろん一つ発生すると必ず全て発生するというわけではなく、二つかもしれないし、また単独かもしれない。


□時系列
出来事
2002 論文『Rat navigation guided by remote control』が発表される。(※1)
2015 中国のGDPが日本を抜き、世界第二位へ。
東南海地震発生。四国から関東の太平洋側の地域が壊滅的被害を受ける。
2016 東京にて大規模テロが発生。死者1000人を超える惨事に。(※2)
2017 日本の兵器開発が解禁される。
2018 憲法を改正し、自衛隊が国防自衛軍へ変更される。(※3)
レガシーを組織。
自律行動型人型戦闘兵器の開発に着手。
2022 自律行動型人型戦闘兵器の研究開発を一時凍結。代わりに15体の局地戦闘用生体接融型機械体の研究開発に着手。
2023 中国で強権派・李が国家主席の座につく。
2028 生機体が完成。実用化に向けての屋内テストを開始。
2029 李による圧制を敷かれ、苦境に立たされた民衆(主に少数民族)による大規模な暴動が発生。中国当局は武力による鎮圧を決定する(第二天安門事件)。
日本の経済状況が悪化の一途を辿る。アメリカ・EU・中国・ブラジル・ロシア・インドについで7番目に。 オートメタル研究開発の凍結解除。
2030 第二天安門事件を受け、少数民族中心だった暴動は中国国内でも非難の声が上がり一般民衆の暴動が多発する。
2031 武器を持った少数民族と民衆が北京を制圧(裏でレガシーが指揮していたという噂が。詳細は不明)。中国の混乱を受け、世界経済が大打撃を受ける。
2032 国連、中国への介入を決定。
オートメタル完成。量産化へ着手。
2033 中国に暫定政権誕生。
中国国内の暴動鎮圧に生機体シリーズの投入を決定。
生機体暴走事件発生。
2034 中華難民の受け入れを拒否。海上からの密入国阻止のため、沿岸部の一部にオートメタルを投入する。
軍部、生機体の破棄を決定。しかし事前に情報が漏れ、一部の生機体を取り逃がす。組織は追撃を決定。

※1… 生機体、オートメタルの先駆け的な研究。
※2… 狙われたのは10両編成の電車。4箇所で同時に自爆テロが発生する。
※3… 9条が変更され、自衛のための戦争は容認されることになった。これによって自衛隊は自衛のための軍隊という解釈になり、国防自衛軍に変更される。


□物語全貌
 BRICsの経済成長やテロ、東南海地震による首都機能停止により、日本には世界を先導する能力はもはや残されてはいなかった。このままでは弱小な一国家に成り下がってしまう。日本の未来を憂いたレガシーの局長・有栖と研究者の研究員長・六道は腐りきった日本を再び世界の中心的な存在へと昇華させようとしていた。偶然発生した地震とテロという二大事件では大きな犠牲が発生したが、第二次大戦以降停止してきた軍需産業を活性化させる口実としては最上のものであり、実際に兵器の研究開発は再開される。二人は、これを利用して世界に名だたる軍事大国として君臨し、兵器を輸出することで経済の安定をも手にしようとした。生機体の研究はその礎であったのである。 非軍事国家だった日本だが、大規模テロにより防戦一方ではいけないという意識が国民に生まれ始める。それは自衛隊を国防自衛軍へと昇格させ、国の交戦権を再び取り戻すに至った。そして、自衛軍内の研究所で新しい兵器の開発――生機体の開発に着手する。生機体シリーズは予想以上の仕上がりをみせ、その研究を応用して完全な機械体(オートメタル)の開発にも着手できた。しかし、いくら制度や国・国民の意識が変わっても、二人からすれば日本政府にしても国民にしてもまだまだ保守的で、急にその態度を変えてはいなかった。そこで有栖と六道は結託し、クーデターを計画する。自分たちが日本のトップに立つことで日本を先導しようとしたのである。だが、普通にクーデターを行っただけでは国民は納得せず、他国からも強い非難を受けてしまう。彼らは考えた末、敵を作ることにした。敵を作り、敵に日本を攻撃させ、それを撃退することで正義を得ようとしたのである。そこで二人は生機体を敵に仕立てることにした。 彼らは人為的に生機体暴走事件を起こす。そして生機体は危険であるという認識を生じさせ、軍に破棄決定を引き出させる。破棄とはつまり生機体と研究者を抹消することである。しかし、このままでは両者は無抵抗に消されるだけである。そこで二人は破棄が実行される前に破棄決定の情報を流し、生機体と研究者の一部を逃がしたのである。人は敵意から自分の身を守ろうとするので、生機体と研究者は必然的に組織に反発することになり、継続的に追撃することで研究者たちは抵抗を余儀なくされるのである。これで敵はできた。 だが、敵を作ってもそれが自分たちの思い通りに行動するとは限らない。敵は必要だったが、それが思い通りに動かないと何の意味もない。そこでレガシーにはもともとの局長であった有栖が、反レガシー側には六道がつくことにより、両方から舵取りをしようとしたのである。反レガシーで六道は“自分たちを追撃するよう命令を出しているのは首相、大臣とその傍らである”といい、関係者の命を狙うようにことを進めた。そして関係者を殺させた上で国家に歯向かう敵をレガシーが倒すという構図を描く。敵が占拠していた国を守ったとすることで他国を納得させる。内外ともに承認を得て合法的に国の実権を握ろうとしたのである。


□人物紹介
・白 [しろ]
生機体No.1。女性型。担当者は神崎空。速さを極限まで求めた生機体。できるだけ重量を削ったフレームは技術者泣かせといわれるほど精巧で完成度が高い。その分耐久性は低いが、奇襲・暗殺用であるため問題ないといえば問題なく、そのデメリットをカバーしきる俊敏さを誇る。鉄くさい研究所の中で唯一といっていい明るいムードメーカー。研究員からはマスコットキャラのようにかわいがられているが、神崎からはもてあそばれている感があり、神崎の趣味(?)の服を着せられている。嫌そうに逃げ回るが、それ込みで嫌いではないようである。その風貌から何も考えてない能天気な性格と思われがちだが、実は考えているというのは本人談。一方で詰めが甘いというのは神崎談。脱走の際、神崎を失い、しばらく悲しみに打ちひしがれる。対レガシーの目的も、どちらかというと復讐に近い。

・真 [しん]
生機体No.2。男性型。担当者は邑澤克己。戦闘狂。だが、ただの狂戦士というわけではなく、頭も切れ、女性には決して手を上げないという紳士。邑澤のことを『頭でっかち』と揶揄しているが、信頼はしているらしい。脱走するが、組織に捕縛されてしまう。組織によって頭部に小型の爆弾が装着され、強制的に使役されるが、その内容はほとんどが防衛・戦闘行為であるため本人にとって苦にならず、本人もあまり気にしていない。重火器による撃ちあいよりも肉弾戦を好む。最後は組織を裏切るが、パワードスーツに移植された零によって破壊される。

・零 [れい]
生機体No.3。女性型。担当者は六道八樹。情報戦略に特化した生機体。情報戦略に特化しているため身体能力は他の生機体に比べて低い。事故により両親を失い、自らも両手両足を失って孤児院にいたところを組織が引き抜いた。大人しい性格だがコミュニケーションはしっかりととれる。生機体になり、再び“立つ”ことができるようになった零は、その当たり前のことに非常に感動し、深く六道に感謝している。そのため、六道のいうことはどんなことであろうと拒んだりしない。六道からも信頼され、生機体の中で唯一有栖と六道の計画を知っており、六道と共に反レガシーで内部から監視を行っている。“立つ”というその当たり前を守るために最後には余川たちと対立。六道に言われるがまま邑澤の作ったパワードスーツに頭脳を移し、攻守共に最強の生機体になったが、人間としての身体を失った。

・千 [せん]
生機体No.4。男性型。担当者は塔摩彰。射撃に特化した生機体。見通せさえすれば10キロ先の標的にも命中させることが可能であるが、日本ではほとんどの場合そこまでの視界を確保できないし、何より局地戦闘用である以上、あまりに遠い射撃範囲は意味をなさない。実践では、後方からの援護射撃が主な役割となるが、敵を殲滅するという目的だけの事件なら、超長距離からの射撃により一人で任務をこなすことも可能である。落ち着いた性格で、いつものんびりと後ろの方にいる。その大人びた様子からたまに研究員に間違われ、話しかけられて困っている姿が目撃される。射撃は得意なのになぜかダーツだけは苦手。脱走の際には無事逃げ切り、反レガシー側に付く。

・夜 [よる]
生機体No.5。女性型。担当者は霧森サキ。霧森が好き勝手にしている生機体で、身体の解体、薬物投与などなどありとあらゆる方法でいじられている。また、研究外でも霧森の私物と化し、霧森の身の回りのことは全て夜が行っている。霧森の命令は絶対で、理不尽な理由で常に罵られている。そのため霧森に言われない限り一切しゃべらないという徹底振りで、感情の起伏もないといってよい。その様子から血の流れていない機械(machine)、実験に使われるマウス(mouse)、霧森の操り人形(marionette)という意味で周りからは“サンマ”(3+ma)と呼ばれる。脱走するが、組織に捕らわれる。

・藍 [あい]
生機体No.6。女性型。担当者は進士宗二。身体中に暗器を仕込み、拷問・暗殺など特殊な行動に特化した生機体。極一般的な体格に見えるが、暗器を仕込むため様々な工夫が施されているので見た目以上に重量があり、俊敏性を欠く部分もある。通常、生機体は脳の操作により睡眠時間は常人より少なくても活動できるようになっているが、なぜか藍だけは四六時中眠たそうにしており、暇なときは常に寝入っている。しかし、ミスはなく、むしろ任務の精確さは常に上位をキープしている。脱走ではあえなく捕縛され、組織の手に落ちる。というよりは暗殺・拷問という能力は有栖の作戦の中で重要なものとなるので、優先低に捕らえるように予め通達されていた。

・黒 [くろ]
生機体No.7。女性型。担当者は余川真司。生機体の中で最も年が大きいため姉的な存在となっている。予算は他の生機体とあまり変わらないにも関わらず、潤沢に資金をつぎ込まれている夜と互角に争うほど高スペックで、実力は折り紙つき。普段は温和な性格で読書を好む知識人。よく“余川の生活習慣がよくない”と注意している。脱走では辛くも逃げ延び、反レガシー側に身をおき、反レガシーの中心的な生機体として活動する。

・神崎 空 [かんざき そら]
研究員。白の担当。女性。酒とタバコを愛する自由人。突然研究室を一週間留守にしたと思ったら、バイクで北海道一周していたという。豪快で快活、お気楽な人。白を溺愛し、好みの服を着せては一人でもだえている。家のことは全て白に任せており、生活能力がないように思えるが、ナイフさえあれば一ヶ月二ヶ月のサバイバルは普通にしてしまうので単にやる気がないだけ。余川とは旧知の仲。脱走の際、白の身代わりになって被弾し、帰らぬ人になる。

・邑澤 克己 [むらさわ かつみ]
研究員。真の担当。男性。堕落的な人間だが、興味の沸いたことには極度の執着を見せる。そのため、ある研究の際あまりに熱心になりすぎて食事を取ること忘れ、栄養失調で病院に運ばれたという噂まで流れている。本人は否定しているが、邑澤の熱心さを間近で見た者の中には信じている者も何人かいる。大学生時代に麻雀にはまったせいで、やたらと物事を麻雀に喩えようとする。 真の担当であるが、「あいつは俺を必要としてないし、俺もあいつを必要としない」といって積極的に関わろうとしない。今はパワードスーツの開発にご執心で、設計から開発までほとんどを一人で行っている。脱走は失敗し、レガシーに残されたが、パワードスーツの開発を続けられるとあって本人は嬉しそうである。

・六道 八樹 [ろくどう やつき]
研究員であると同時に研究員長。零の担当。男性。温和で優しい、眼鏡の似合う人物。その結果、雑務の多い研究員の長までやっている。誰もが“あの人がいいから”程度にしか思っていないが、実際はクーデター計画のため、有栖と頻繁に会ってもおかしくないように口実を作っただけにすぎない。しかし、温和な性格というのは作り物ではなく、もともとのもの。脱走事件では、予定通り反レガシーのリーダー的な存在となり、敵対勢力を演じることとなる。民族主義的傾向が強い。

・塔摩 彰 [とうま あきら]
研究員。千の担当。男性。気が弱く色白で眼鏡をつけた研究者らしい(?)研究者。もともとAI(人工知能)の技術と知識が買われて引き抜かれたため、もっぱらオートメタルの開発に力を入れている。千の担当をしているのは単に人数あわせ。しかし、少し年の離れた兄弟のように仲がよく、よく二人で将棋や囲碁などの知的遊戯で対戦しているところが目撃される。専門でもなんでもないが、戦術作戦を立てることに天賦の才があり、軍事演習などで重宝されている。脱走の際、千と一緒に反レガシー側に付く。

・霧森 サキ [きりもり さき]
研究員。夜の担当。女性。過去、天才といわれた外科医だったが、人体実験を行い、逮捕され、刑務所へ。医学会から永久追放された。日本にいては自分の好きな研究が行えないと知り、刑期を終えると同時に法が整備されていない他の国に行こうとしていたところを軍部に引き抜かれた。軍部の引き抜きに、霧森は条件付で承諾。その条件とは、1.生機体の担当者にすること、2.生機体に行う一切の行為に文句をつけないこと、3.一ヶ月に一回生きた人間を提供すること(人体実験用)、4.自分の食事に肉は出さない、というもの。4の条件について霧森曰く「動物(肉)は実験の材料であり、食料にはなりえない」かららしく、周りの人間はベジタリアンだと勘違い(そもそも肉を食料だと思っていないためベジタリアン(肉食を排する主義・思想)ではない)する。人間として間違っていても、能力だけは確かで、かつ他の生機体よりも制約が少ないため夜は生機体の中でもっとも優れている。脱走では組織に捕らわれ、再び組織で研究開発に勤しむことになる。ただ脱走時に両足と片目を失い、移動は全て夜に車椅子を押させている。

・進士 宗二 [しんし そうじ]
研究員。藍の担当。男性。知的でクール、寡黙なリアリスト。街を歩いているとよく女性や芸能界関係の人間に声をかけられるほどの美形で、研究者をやっていなかったら間違いなくモデルだっただろうといわれている。研究所内の女性の人気も高い。しかし、当の本人は目立つことは余り好きでない。辛くも脱走に失敗するが、一連の事件の不可解な点に気付き、レガシー内部で独自に調査を始めることになる。

・余川 真司 [よかわ しんじ]
研究員。黒の担当。主人公。優秀な神経科学に精通した青年で、人間の神経と機械部分擬似神経系の接続に貢献する。若くして神経科学界に多大な功績をもたらす。親しみやすい性格と真面目で堅実な仕事ぶりから周りの人間からは信頼されている。一方で、生活能力が低く(というよりも無頓着)、効率性のほうを重視してしまい、放っておくと出来あいのものばかり食べ、部屋には物が溢れてしまう。学生時代に知り合った神崎空とは仲がよく、家事をしないもの同士馬が合うらしい。脱走に成功し、反レガシー側に付くが、いち早くレガシーの言動に不信感を持ち、反レガシーとして活動する傍ら、黒と二人で事件の真相に迫っていく。

・有栖 劉 [ありす りゅう]
レガシー局長。異例の速さで幹部まで上り詰めた有能な人物。もともと自衛隊の幹部で、日本の甘い考え方を常に憂いていたが、偶然遭遇したテロによってその意思が固まり、強固な日本への進化を求めるようになった。そんなとき、同じ意見と意思を持つ六道と出会ってクーデターを企てることになる。組織内では「アリスのくせに少しも可愛くない」といわれ、『黒アリス』と揶揄されほど厳しいが、駄目なことには誰に対してもNOを突きつける潔さから信頼しているものは多い。レガシーでも、「アメの六道、ムチの有栖」と言われ、いいバランスをとっている。上杉鷹山的な思想の持ち主。


□ストーリー
内容
プロローグ ○サブタイトル []
世界の状況についての説明。主に日本の立場、中国の台頭、生機体開発までの経緯。
第一話 ○サブタイトル []
生機体の日常と中国に投下されて実践での戦闘を行うところ。ここは素直にかっこよく生機体を見せる。そして、暴走事件と脱走。神崎空が逃走中死ぬ。霧森サキも負傷。
第二話 ○サブタイトル []
反レガシーの組織と武器の調達。生機体関連パーツと武器類を輸送中のトラックを狙うが、護衛していた生機体(真)と交戦する。辛くも撃退し、パーツ&武器を入手し、レガシー側の生機体の頭に爆弾が付けられていることを知る。この事実を切欠に主人公が生機体暴走事件に疑問を抱くようになる。
第三話 ○サブタイトル []
トラックの逃走経路より隠れ家の大まかな位置が知られてしまって反レガシーは別の場所に移動することを決意する。しかし、捜査網はすぐ傍まで来ており、生身の人間が普通に逃げるのは困難であった。そこで反レガシーは生機体たちに近くの軍施設を襲わせることでその隙に人間を逃がそうと試みる。軍施設内部で予め派遣されていたレガシー側の生機体と交戦するが、進士宗二と出会い、進士もこの一連の事件について疑問を持っていることを知る。 


□語句説明
・局地戦闘用生体接融型機械体 [きょくちせんとうようせいたいせつゆうがたきかいたい]
身体の一部を機械に置き換え、神経組織と機械体を連結させることで生身では不可能な身体能力、付加能力をもった人間。生機体と略される。対テロリスト、対武装集団などの小規模戦闘おける局地戦闘用の兵器として開発された。完全な機械体を製作しようとしたが、認識・判断装置の技術が未完成で、その時点での科学技術では製作が困難であった。そのため、人間をベースして認識・判断の過程を脳に任してしまおうとしたのである。最初に実験機として孤児院などの児童保護施設や精神病院にいる15人の子供(3〜8歳)を選び、薬物で脳を操作、ある程度の従順さを植えつけた上で機械の身体に仕上げていった。生機体は予想以上の完成度を見せたが、研究が進むにつれて量産が難しいこと、個体差があるゆえ管理しにくいこと(個体差を長所とするものもいる)などの問題は浮上するようになった。特に注視されたのは他国や人権擁護団体からのバッシングである。生機体は人間をベースにして作られているため、人権の問題が絡んでくる。近代国家では人権問題は国の重要な関心事のひとつであり、人権問題は国内ならず他国家からの大きな不信となり、国を揺るがす大問題に発展しかねない。中国での成果は技術的には大きな収穫であったが、あまりに目立ちすぎた(他国対しては自律行動型人型戦闘兵器の試作機であると説明)ため、生機体の情報が流出してしまう可能性が出てきたのである(この問題については国と軍(組織)には温度差があった)。そして、これらの問題が議論されている最中に生機体暴走事件が発生し、結局破棄が決定した。


・自律行動型人型戦闘兵器 [じりつこうどうがたひとがたせんとうへいき]
通称オートメタル。自行兵とも。生機体の技術を応用し、人間を用いずに作り上げた人型兵器。CNT合金を全身に用い、エクレウム電池によって連続14時間の活動に耐える。金属の塊であるため、沼地、水辺など地盤が脆弱な場所での活動は制限されるが、それを考慮しても有り余る戦闘能力を持つ。


・レガシー/LEGACY [れがしー]
国防自衛軍技術開発部人型戦闘兵器局レガシー。局地戦闘用の人型歩行兵器開発のために作られた部署。他にも銃器を専門に扱う部署や戦闘機を扱う部署などもあるが、特に人型戦闘兵器は注目されており、日本が行う武器開発のメインとされている。


・CNT合金 [しーえぬてぃーごうきん]
カーボンナノチューブ合金。“炭合(炭素グラフェンシート合金の略)”とも言われる。カーボンナノチューブに様々な金属を混ぜることで軽量かつ、高強度を実現した素材の総称。


・エクレウム電池 [えくれうむでんち]
オートメタルに搭載されているエクレウムを使った二次電池。小型だが蓄えられるエネルギーは多い。


・技機制限法 [ぎきせいげんほう]
正式名称は「特定組織の技術、機械等が国家または国民の安全を妨げる可能性がある場合における技術、機械等の使用を制限する特別措置法」。国の機関に適応される特別措置法。国の運営する機関のうち、その機関が開発した技術、道具、機械などが国、または国民の安全を脅かす、あるいはその可能性がある場合、喩えその技術や使用方法が既存の法の範囲内であっても担当大臣の権限によりそれを凍結、破棄できるという法律。国による圧力だとして産業界から大きなバッシングを受けたが、実際は生機体の製造に関連して重大な事態に発展する前に排除するいいわけである。建前的には軍事産業が復活した日本における国のチェック機能となっている。


・パワードスーツ [ぱわーどすーつ]
人型の能力補助外骨格。生身の人間が中に乗り込んで操作することを目的として作られている。研究開発前から生機体には様々な反対意見があった。そのひとつに、生機体は生機体のみの強さに依存してしまうというものがあった。すなわち、生機体は強力かもしれないが固体の強さゆえ、パワーバランスが悪いということである。軍部としては軍全体の能力の向上を求めており、その点に関して言えば生機体は不向きである。そこで組織は訓練次第で誰しもが扱える兵器、パワードスーツの研究開発に着手したのである。開発途中のため一体しか作られていない(しかも未完成)が、実験機であることから実際の使用性や量産性などを無視しているためその能力は生機体を凌駕する。


□イベント解説
・東京地下鉄同時爆破テロ事件
 2016年午前8時13分に東京都の地下鉄(東京丸ノ内線、新宿丸ノ内線、霞ヶ関日比谷線、永田町有楽町線、神保町都営新宿線)で起こった同時爆破テロ。アメリカに支援を続ける日本に対してイスラム系原理主義グループが東南海地震の混乱に乗じて行ったものである。死者891人、負傷者1743人を出す大惨事となり、東京の交通機関に大きな被害を与えた。日本の鉄道網は気軽に利用できる一方で、警備体制が非常に緩い。飛行機と同等の輸送能力を持った交通機関がこのような脆弱な体制で運営されているのは大きな問題である。このテロ事件を受け、日本政府は鉄道にもICタグを用いた簡易乗車検査、歩行パターン認識装置を導入した。歩行パターン認識装置は人間の歩行パターンを解析し、照合するバイオメトリクスで、登録されている人物を探し出すことができる。


・『技機制限法に基づく生機体の破棄決定』と情報流出
生機体暴走事件を受け、軍部、首相、防衛大臣は生機体の破棄を決定する。生機体の暴走が決定打であったが、政府は以前から生機体に危機感を抱いていた。というのも、オートメタルが完成した今、生機体をこれ以上研究する価値はあまりなかったのである。もちろん、研究を重ねれば更なる成果を期待できたが、それ以上に生機体が人間を使ったものであるという事実が公になるかもしれないと心配していたのである。生機体を仕上げるには人権を無視した行為を行わなければならない。人権問題は国を揺るがす国際問題に発展しかねない危険性をはらむため、生機体は厄介な爆弾でしかなかったのである。  破棄が正式に決定されたことはごく一部の人間にだけが知っていたが、実行の前日にどこからか情報が流出してしまう。これは六道がわざとリークして、生機体と研究者を逃がすための手段であったが、軍部の攻撃により何体かの生機体と研究者を失う結果となった。生機体と研究者を逃がすことは有栖と六道の計画のうちであったので、わざと逃げやすい状況を作っていたといえる。


・生機体暴走事件
2033年に組織の研究所内で起こった事件。生機体のメンテナンス中、突如生機体の一体が錯乱状態なり、無差別攻撃を行った。死者13名、負傷者32名を出す惨事となり、生機体破棄の決定的な事件となる。原因としては、精神異常(暴走した生機体に使われていた子供が精神病院にいた子供だった)や神経組織と機械回路の不具合からきた凶暴化などが挙げられたが、特定されていない。実際は六道が注入したマイクロマシンで、生機体破棄決定を出させ、組織と生機体の対立関係を作り出そうとした人為的なものであった。そもそも、元々精神病院にいた子供を目標にしたのも意図的なもの。差別を否定している現在においても精神病というものはまだ偏見の眼で見られているため、破棄決定を出すには格好の理由付けができるのである。


・中華難民の密入国に対する沿岸地域の警備
暫定政府下の中国では、法体制の不備や貧困者の浮浪化などにより多くの難民が発生した。彼らの多くは近隣の国に移動したが、中には海上から日本にやってくるものもいたのである。(もちろん一方的に受け入れるわけにも行かなかったが)その人数は少なく、今までの海上保安庁による海上警備や船舶の調査で十分まかなえるものであった。しかし、脱走した生機体が海上を経由して他国に逃げてしまう可能性が出てきたため、名目上、密入国の監視強化としてオートメタルが投入されたのである。しかし、難民の多くは近隣の韓国、ロシア辺りに流れており、少数の難民に対してオートメタルを投入するのは如何なものかと抗議が出ることになる。


・研究者の指名手配
当初、反レガシーでは領事館に逃げ込み、亡命を図ろうとした。しかし、それでは生機体の真実や技術が他国に流出してしまう可能性があり、有栖と六道の計画に、また国にとっても得策ではなった。ゆえに生機体の事実はさけ、テレビ局に対して研究者だけを指名手配したのである。


□参考資料
・徳冨蘆花『謀叛論』
「……諸君、謀叛を恐れてはならぬ。……自ら謀叛人となるを恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である」


・エリッヒ・フロム『自由からの逃走』
「近代立憲主義の核心は個人の尊厳である。それは個人が自分自身の運命を自分で決定するという重みに耐えることを要求する。それに耐えられなくなったとき、他人に運命を決めてもらう独裁が起こる」


・上杉鷹山 [うえすぎ ようざん]
1750年生まれの上杉家10代目当主。様々な政策により藩の膨大な借金を返したり、大凶作から農民を救ったりした人物。1.国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして、我私すべきものにはこれなく候、2.人民は国家に属したる人民にして、我私すべきものにはこれなく候、3.国家人民のために立てる君にて、君のために立てる国家人民にはこれなく候という内容の「人君の心得三か条」を立て、民を尊重した。これを民主主義=主権在民の萌芽と捉える向きもあるが、封建制度を否定したわけではなく、むしろ儒教(王候学)の教えを貫いた結果だともいえる。過酷な封建制度の中であっても、このような統治は可能であるという証明であり、今日の民主主義でできなかったことをやっていたという意味では上位に位置すると考えてもおかしくはない。


・ODAと自衛隊

日本の政府開発援助ODA(Official Development Assistance)は13147百万ドルで世界大3位である。しかし、グラフを見て分かるように、2001年頃を境にして各国とも右肩上がりになっている。これは2001年に起こった9.11テロの影響を受け、先進国が開発途上国に対して積極的な援助を行うようになった結果である。先進国はODAという形で開発途上国に経済的安定をもたらすことで情勢を安定させようとしているのである。一方、日本は同じ水準を保ったまま推移しており、数年後には日本のODAは世界第5位辺りまで落ちるといわれている。日本は軍隊を持たないがために、金銭的な面で世界貢献してきた節がある。しかし、各国が力を入れ始めた今、相対的に日本のODAの価値は下がってきてしまった。これまで自衛隊を派遣する代わりに金銭的支援を行っていた日本にとって由々しき事態であり、これからの時代は世界からの自衛隊派遣の要請は高まっていくと予想される。


・個人戦闘
個人戦は古来より行われてきた伝統社会での戦闘方法である。しかし、未来においては戦場に人間は存在せず、物質対物質の戦いとなる。指揮官はモニタの中で戦争を行い、兵士は物質となる。それは戦争というリアリティの喪失である。


・科学雑誌ネイチャー『Rat navigation guided by remote control』
2002年に発表されたラットの脳に電極を差して自由に操作できるという内容の論文。動物を物のように扱うとはなんたることかと、動物愛護団体が注目すると同時に、生物を外的に操作できるということを実践したという意味で多くの衝撃を与えた。


・民主主義
民主主義では民意が重要になる。民意の味方につけさえすれば、それは圧倒的な支持となり、また逆も然りである。また、民主主義はある意味で自愛に満ちている。なぜなら民主主義国の中で社会主義や自由主義を唱えて民主主義を否定しても、民主主義はそれを擁護しなければならないからである。


□キャッチフレーズ
ちっぽけな私でも、きっとちっぽけなことぐらいはできるから。
彼女たちの身体は、血と、肉と、歯車でできていた。